破壊力抜群の脚
2007/01/24(17:45)
私が関西の週刊誌、当日版のメインの本文(ポイント)を初めて任されたのが05年の京都大賞典。それから昨年末までは日曜のメインを任され、今年からは土日ともメインの本文を書いている。前の週の週末に週刊誌の本文を書き、さらに当日版用にも原稿を書く。展開の原稿も同時に書くし、当日版の「データの囁き」を担当していることもあり、人よりもそのレースについて深く掘り下げているという自負はある(それでも馬券は当たらないことの方が多いが)。
先週の平安Sも例にもれず、同様に原稿を書いていた。不思議なもので、原稿を書いていると「あ、この馬は要らないな」と思うことが時々ある。それは原稿を書く際、いわゆる「買い材料」が少なかったり、「買い材料」があっても、それを打ち消してしまうような要素があるときに感じるもので、正直、今回に関してはサンライズバッカス以外の上位人気馬はほとんど要らないのではないかという気持ちがあった。その理由は「展開」にあった。
平安Sのデータの囁きに、私はこう書いた。
「特徴的なのは時計の速さで、1分50秒を切る時計が6回、1分50秒台前半が2回。1分50秒台前半の持ち時計がないと厳しいし、また、上がりも速いので、4角では5〜6番手あたりには位置しておかないと届かない」
平安Sのセオリーとでも言おうか。これに当てはまる過去10年の連対馬は16頭。昨年など、レースの上がり3ハロンが35秒5だったのだから、追い込み馬なんて到底届かない。3角過ぎから動いていけば、それこそ終いの脚をなくして止まってしまうだろう。サンライズバッカスはゲート難があるだけで、決して追い込み一辺倒という不器用なタイプではないが、フィールドルージュやタガノサイクロンは典型的な終い一手のタイプ。シルククルセイダーは前々でも競馬ができるが、1800mでは不良馬場で1分52秒7が最速。持ち時計に不安があり過ぎる。この3頭はとても無理だろうと踏んだ。
展開の原稿には「エイシンラージヒルがハナ。シャーベットトーン、バンブーエールと続く。サンライズバッカス、フィールドルージュは中団よりやや後方。淡々としたペースで、これといった動きのないまま3角過ぎまで進み、そこからジワッとペースアップ。4角で先行集団が一団となり、直線は激しい叩き合いに」と書いた。この展開、そして例年の傾向で行けば、おそらくレースの上がり3ハロンは36秒ちょっと。その速い上がりを上回る上がりで差してこれる馬は今年のメンバーにはまずいない。それなら、先行勢のうち、どの馬が速い時計に対応して粘り込むかだろう。そう思って、個人予想は◎をその気になればハナにも行けるサカラートに、○はサンライズバッカス、ハナを切って勝ち上がってきたシャーベットトーンに▲をつけて提出した。久々に「これはアッサリ当たるんじゃないだろうか」などと舞い上がっていた。
レースはほぼ予想したままの展開。4角を回っても先行勢には手応えが残っている。「シャーベットトーンが粘れば結構つくなぁ。サンライズバッカスもきた!よし、それでいい!」と思ったその瞬間、画面が更に外から怒涛のごとく追い込んでくるメイショウトウコンを大映しにした。道中はほぼ最後方、4角でも後ろから数えた方が早い位置にいた馬がなんでこんなところに・・・と思っている間にみるみる差は詰まり、アッサリと差し切られた。
レースの上がりは36秒6。時計も1分51秒0なら十分速い。展開も時計も読み通り、ほぼ予想通りの流れで進んだはずだったのに・・・。こんな時計を4角13番手から大外をぶん回して差し切り、メイショウトウコン自身の上がり3ハロンは35秒1。ダートでこの上がりはもはや異常。想像を大きく上回る、まさに破壊力抜群の脚に私の予想も馬券も見事に打ち砕かれてしまった。参った。お手上げだ。
そうして一躍「ダートの新星」となったメイショウトウコン。次走は当然フェブラリーSのよう。ここで、彼にとっておきのデータを示したいと思う。先ほど書いた平安Sのセオリー。このセオリーを破った馬は過去10年で4頭だけだが、その4頭は97年の勝ち馬シンコウウインディ、98年の勝ち馬エムアイブラン、2着馬アドマイヤコール、05年の勝ち馬ヒシアトラス。このうち、次走にフェブラリーSを選んだ馬は3頭。その成績はというと、シンコウウインディが1着、エムアイブランが6着、ヒシアトラスが3着。エムアイブランはこの翌年には2着と結果を出した。この分なら、メイショウトウコンもフェブラリーSでいい結果が出せるのではないだろうか。
(坂井直樹)
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